タマネギ中毒
タマネギ中毒 について
犬猫のタマネギ中毒(溶血性貧血)は
犬 はニンニク 10 g/kg、玉ねぎ 15 g/kg 乾燥玉ねぎ 5 g/kg
猫 はニンニク 1 g/kg、玉ねぎ 5 g/kgでおこします。
猫はオニオンパウダーを餌に、わずか0.3%加えただけでもタマネギ中毒をおこします。
目次
タマネギ中毒の原因
2022 年アメリカ動物毒物管理センタ -の 7,400 件のタマネギ中毒の相談の中で貧血になったのは 52 匹(0.3%)で、犬は 43 匹、猫は 9 匹でした。
米国動物毒物管理センターサイト☛ASPCA 動物毒物管理センター
タマネギ中毒の原因
タマネギ等のアリウム種にはスルホキシド(硫黄含有化合物)が含まれており、タマネギ、ニンニク等を傷つけると加水分解されてチオスルフィネートになり、さらにジスルフィドに分解されます。(これらの化合物がタマネギに強い匂い、味、になります)ジスルフィド化合物は胃腸管で吸収され、赤血球を酸化して、貧血をおこさせます。中毒は、一度に大量の摂取や、食品中の慢性的な摂取でおこります. 臭いが強いほど、毒物学的効力が大きくなります。「無臭」「脱臭」されたニンニクサプリメントは、多くの有機硫黄化合物が除去されており、毒性が低いと考えられています.
タマネギ中毒のしくみ
タマネギ、ニンニク等に含まれる血液毒性化合物は、ヘモグロビンをメトヘモグロビンへ変換を引き起こし、溶血性貧血とハインツ小体の形成を引き起こします。血液毒性化合物 の多くは消化管から容易に吸収され、その後代謝されて反応性の高い酸化剤になります。 N-プロピルジスルフィドなどは、赤血球内のグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼの活性を低下させます。ヘモグロビンの酸化変性を防ぐために必要なグルタチオンの再生を妨げます。変性ヘモグロビンは赤血球表面に沈殿してハインツ小体を形成し、血管内および血管外の両方の溶血を引き起こします。
タマネギ中毒の症状
胃腸障害 血液障害
胃腸障害の症状:重症度は摂取した種類と量によって異なります。ニンニク製品は、胃や腸の粘膜に直接損傷を与え、下痢や痛みを引き起こします。
血液障害の症状:タマネギを摂取して 24 時間以内に、赤血球中のハインツ小体とメトヘモグロビンのレベルが上昇し始め、 3 日目頃にピークに達します。溶血は遅れて、 3 ~ 5 日以内に起こります。実験的では、ニンニクによる溶血は摂取後約7日で見られました。
血管拡張作用、抗血栓作用、血圧降下作用
血液毒性に加えて、ネギ属のアリシンやアホエンなどの薬理活性物質により、血管拡張作用、抗血栓作用、血圧降下作用もあります。ニンニクでより強力で、降圧作用と抗血栓作用は、貧血を悪化させる可能性があります
新鮮なタマネギと乾燥したタマネギ
タマネギとニンニクの粉末は、脱水され濃縮されているため、より有毒で、オニオンスープの素等は非常に危険です。研究では、犬に 5.5 g/kg の乾燥タマネギ(新鮮なタマネギよりも強力)を 1 回与えると、ハインツ小体とその後の貧血が誘発されました。
タマネギ中毒になる、ニンニク、タマネギの量
犬 > ニンニク 10 g/kg、玉ねぎ > 15 g/kg 乾燥玉ねぎ 5 g/kg 猫 > ニンニク 1 g/kg、玉ねぎ > 5 g/kg
テーブル。タマネギとニンニクの毒性相当物* | |||||
種族 | サイズ | 重さ | 新鮮 | 脱水(フレーク) | 造粒、粉末 最も危険 |
ニンニク | 1かけ | 3~7g | 小さじ1~2(みじん切り) | 大さじ¼~½ | 小さじ¼~½ |
1個固まり | 60~75g | 大さじ4~5 | 大さじ1~1¼ | ||
タマネギ | 小 | 60~130g | みじん切り1/3カップ(〜3オンス) | 大さじ1 | 小さじ1 |
中 | 130~250g | みじん切り2/3カップ(〜6オンス) | 大さじ2 | 小さじ2 | |
※すべての植物原料と同様に、生育条件(土壌、気候など)、品種・株・品種、加工方法の違いにより、実際の重量や硫化物含有量は異なります。この情報は、摂取されたニンニクまたはタマネギの量を推定するのに役立つ大まかなガイドとして提供されています. |
ニンニクはタマネギよりもグラムあたりの毒性が高く、研究によると玉ねぎの3 ~ 5 倍の毒性があります。
オニオンスープ、ガーリックの粉素等粉末が最も危険です、
犬の種類による違い
日本犬(秋田犬、柴犬、四国犬、カイケン、日本テリア、土佐犬、日本スピッツ、北海道 香港犬 など)は遺伝的にタマネギ中毒のリスクが高く、より少ない量でタマネギ中毒を起こします。
実験では茹でた玉ねぎを経口投与してから 12 時間後、ヘモグロビン濃度は初期値の 84.4% に減少したが、他の犬種では90.5%までしか減少しませんでした。
参考文献👉遺伝性の赤血球増加率が高く、グルタチオン濃度とカリウム濃度が低下している犬のタマネギ誘発性溶血に対する感受性
猫は犬より危険です
猫のヘモグロビンは、犬や人間のヘモグロビンよりも酸化損傷に対して 2 ~ 3 倍敏感であると考えられています。5 g/kg 以上のタマネギを摂取すると、ヘモグロビンの酸化損傷を引き起こし、貧血を引き起こすリスクがあります、ヘモグロビン尿による腎障害の危険もあります。過去にアメリカで猫のタマネギ中毒が大量に発生したことがありましたが、原因は猫によく与えていた人間の離乳食の味付けにメーカーがオニオンパウダーを加えていたからでした。猫はオニオンパウダーを餌のわずか0.3%加えただけでもタマネギ中毒をおこします。一部の市販の人間用ベビーフードには 1.8% 以上のオニオンパウダーが含まれていることもありますので、人間用ベビーフードを猫に与える時は十分確認してください。
観賞用、野生アリュウム属による中毒
園芸用、観賞用のアリュウム属も食欲タマネギ、ニンニクと同じ様に中毒を起こすします、犬猫を飼育しているご家庭は庭にアリュウム属を植えたり、家に持こまなようにしましょう
👉野生アリュウム属の毒性PDF
タマネギ中毒の解毒剤
タマネギやニンニク食べてから2時間以内であれば嘔吐させますので直ぐに来院してください。活性炭を投与して毒素を吸着させ、点滴によって腎臓の尿細管損傷を軽減させます。
タマネギ中毒の解毒剤としてグルタチオン投与
タマネギ、ニンニク等に含まれる血液毒性化合物は、ヘモグロビンの酸化変性を防ぐために必要なグルタチオンの再生を妨いでしまいますので、当院ではグルタチオンの内服薬をを1週間程度投与し、ヘモグロビンの酸化変性を防ぎます。貧血が重度の場合は低酸素症に対応するために酸素室での入院が必要になります。
モニタリング
タマネギ中毒は発症が遅れるため、 5 日間は毎日貧血と腎臓をモニタリングが必要です。
当院に連絡する時は
①動物の種類、年齢、体重
②食べたネギの種類と量
③食べてからの時間を教えてください
名古屋夜間救急動物病院 こざわ犬猫病院☛アクセス