猫の大動脈血栓塞栓症
猫の大動脈血栓塞栓症 について
猫肥大型心筋症の猫の約 12% が、診断から 10 年以内に猫の大動脈血栓塞栓症を発症します。猫が肥大型心筋症と診断を受けたら抗血小板薬クロピログレル+リバーロキサバンを投与して大動脈血栓塞栓症を予防してください。血栓塞栓症の猫におけるクロピドグレルとリバーロキサバンの併用療法が最も安全で効果的な予防法です
参考文献 👉血栓塞栓症の猫におけるクロピドグレルとリバーロキサバンの併用療法
参考文献 👉3 つの視点から見た血栓: 評論家、心臓専門医、放射線科医 国際獣医救急・救命救急シンポジウム2020
参考文献 👉猫の血小板機能と凝固パラメーターに対するリバーロキサバンとクロピドログレルを使用した二重抗血栓療法の効果

目次
・猫の大動脈血栓塞栓症の症状
・猫の大動脈血栓塞栓症の生存率
・猫の大動脈血栓塞栓症の血栓溶解療法
・猫の大動脈血栓塞栓症予防
猫の大動脈血栓塞栓症の症状
症状は両後ろ足機能の急性喪失です。片側の後肢(左より右)発生することもありますが、両側が一般的です研究では片側の関与が20.8%であるのに対し、両側の関与は77.6%)まれに前肢におこることもあります。
手足が冷たくなり、青白くなります。爪が切れても出血しなくなり、手足の筋肉は硬く、痛みを伴います。猫によっては大声を出したり、よだれを垂らしたりすることもあります。直腸低体温症も見られ、予後は非常にわるく生存率は低く再発率も高いです(研究では再発率約50%)。

猫の大動脈血栓塞栓症の⾎栓溶解治療
人間の⾎栓溶解治療では、組織型プラスミノーゲン活性化因⼦ (TPA) を使います
人間の臨床では、第 1 世代の⾎栓溶解薬ストレプトキナーゼとウロキナーゼ、第 2 世代の TPAアルテプラーゼ、さらに最近では第 3 世代の⾎栓溶解薬組換え レテプラーゼ(日本未発売)が用いれら、有効性が確認されております。人間においては、医師会が肺⾎栓塞栓症(PTE)、急性⼼筋梗塞、急性虚脳卒中(AIS)などさまざまな疾患の患者に対する⾎栓溶解療法の使⽤に関するガイドラインを 発表しており、このコンセンサスガイドラインで、TPAによる⾎栓溶解療法を使⽤することを提案しています。
人間のガイドラインでは症状発現後3時間以内に治療を開始できる患者にはTPAの静脈内投与を推奨しています、猫でみられる、⼤動脈⾎栓症はヒトではまれあり、治療に関するコンセンサスはありません。
ネコの⾎栓溶解療法について最初に報告された研究は、1969 年のフランスの⼤動脈⾎栓症 モデルで、静脈内ストレプトキナーゼが使⽤されま、84% のネコで⾎栓が消失しました。
1980 年代には、カリフォルニア⼤ 学デービス校で数匹のネコ (約 10〜12 匹) に TPA が使⽤され、退院したすべてのネコが来院後 48 時間以内に歩⾏しました。
1987 年の 6 匹のネコに関する研究は、臨床症状の平均持続時間は 17 時間 (範囲 5〜29 時間) で、TPAが使⽤されました。
2010 年に、⾮対照前向き研究で 11 匹の猫を対象にアルテプラーゼが調査されました。臨床症状の発現から 12 時間以内に猫の 67% で脈拍が戻り、四肢機能が改善しましたが、退院できたのは 27% の猫だけでした。
TPA 群の退院⽣存率は 44% でした、重要なことに、TPA 群対照群と対照群の⽣存率に悪化は⾒られず (それぞれ 44% 対 29%)、再灌流障害 (それぞ れ 42% 対 50%) や 腎不全 (それぞれ 25% 対 25%) などの合併症率にも差がありませんでした
コンセンサス声明が発表されて以来、急性猫⼤動脈⾎栓塞栓症における⾎栓溶解療法に関する重要な⽂献が追加されました。急性猫⼤動脈⾎栓塞栓症にTPAを使⽤した前向きランダム化プラセボ対照試験である早期 TPA による⼤動脈鞍型⾎栓の両側溶解試験では、TPA が急性猫⼤動脈⾎栓塞栓症 の予後を悪化させないという後ろ向き試験の結果が確認されました。
当院での⾎栓溶解療法による治療方針

急性猫⼤動脈⾎栓塞栓症 における⾎栓溶解療法は、リスク増加を伴いません。最近の世界猫学会のコンセンサスでは、個々の猫のリスクと利点を評価した上で、急性 (発症から6 時間未満) 動脈⾎栓塞栓症の治療に⾎栓溶解剤の使⽤を推奨しております。

当院では飼い主様と相談の上、急性猫⼤動脈⾎栓塞栓症の症状発症6時間未満の猫に TPAアルテプラーゼ アクチバシン注射 遺伝子組み換え(協和キリン株式会社)持続点滴による⾎栓溶解療法を行っております。https://pins.japic.or.jp/pdf/medical_interview/IF00001610.pdf
猫の大動脈血栓塞栓症の生存率
猫の大動脈血栓塞栓症250 匹を対象とした研究では、最初の来院時に 153 匹(61.2%)が安楽死させられ、24 時間以上生存したのはわずか 27.2% でした。この研究で 24 時間生存し、病院で治療を受けた猫のうち、7 日間生存したのはわずか50% でした。
猫の大動脈血栓塞栓症予防
死亡率高くも予後も悪い病気ですので、予防が大事です。
抗血小板療法: 血小板の活性と凝集を抑制し血栓の形成を防ぎます。プロピログレルを1頭あたり18.75mg24時間おきに飲ませますが、新しい薬のリバーロキサバンと2剤で治療を受けた 猫の大動脈血栓塞栓症 再発率が最も低く、副作用の発生率が低く。生存期間も長くなります2剤投与が有効です。当院では心筋症の猫ちゃんには クロピログレル+リバーロキサバンを1日1回投与して頂いております。
参考文献 👉血栓塞栓症の猫におけるクロピドグレルとリバーロキサバンの併用療法
猫の肥大型心筋症の約 12% が、診断から 10 年以内に猫の大動脈血栓塞栓症を発症することが判ってます、毎日の内服薬で予防しましょう。クロピログレルは苦くて猫に飲ませるのが大変ですが、リバーロキサバン(凝固第 X 因子およびプロトロンビナーゼ活性を直接阻害することによって作用する新しい抗凝固薬)は苦くないのでリバーロキサバンだけでも飲ませましょう。
名古屋夜間救急動物病院 こざわ犬猫病院☛アクセス