チョコレート中毒
チョコレート中毒 について

犬や猫は、チョコレートに含まれるカフェインとテオブロミンによってチョコレート中毒を引き起こします。これにより、胃腸障害、心血管障害、神経障害(嘔吐、下痢、震え、発作、重症例では死亡)などの症状が現れます。カカオの濃度が高いほど危険度が増します。
チョコレートチップクッキー1個程度の少量のミルクチョコレートであれば、通常は問題ありません。
予防は治療に勝ります。チョコレートのおやつは、ペットの手の届かない場所に保管してください。
チョコレートの毒性が犬の体から完全に抜けるまでには、およそ4日かかります。
目次
1 チョコレート中毒の原因
1-1日本で販売されている高カカオチョコレート
1-2カカオ製品に含まれるメチルキサンチンの含有量
1-3チョコレートに含まれる脂肪による膵炎
1-4チョコレートに含まれるテオブロミンとカフェイン
2 チョコレート中毒の症状
2-1テオブロミンの量による症状
2-2犬44頭の症状
3 子犬、胎児への影響
4 犬の種類によるチョコレート中毒の差
5 猫のチョコレート中毒(犬より危険です)
6 チョコレート中毒の治療方法?
6-1吐かせる
6-2解毒させる
7 チョコレート中毒で家庭でできるこ
7-1排尿をうながす
8 チョコレート中毒で死亡することもありますか?
9 病院に連絡する時は次の4点を教えて下さい

1チョコレート中毒の原因
チョコレートには、ミルク、ダーク、ホワイト、無糖、ココアパウダーなど様々な種類がありますが、主に問題となるのは脂肪、テオブロミン、カフェインといった成分です。そのため、カカオ成分が多いほど毒性が強くなります。一般的に、色が濃く甘くないチョコレートほどカカオの含有量が多い傾向があります。ちなみに、カフェインはコーヒーやエナジードリンクにも多く含まれています。
テオブロミンとカフェインは消化管から速やかに吸収されますが、チョコレート製品に含まれる脂肪分が吸収を遅らせる可能性もあります。また、大量にチョコレートを摂取した場合、胃の中でチョコレート胃石(石のように固まる)が形成され、吸収が遅くなることもあります。
犬におけるテオブロミンの半減期は約17.5時間、カフェインの半減期は約4.5時間です。カフェインの影響は摂取後30~60分以内に現れ、テオブロミンの影響は摂取後2時間以上経過してから現れるとされています。
米国動物毒物管理センターに報告された犬の中毒で最も多いのはチョコレート中毒です。米国ではクリスマスとイースターの休暇期間中に発生率が高いようですが、当院ではハロウィンとバレンタインの期間に発生率が高いです。
1-1 日本国内で販売されている高カカオチョハロウィンコレート

1-2カカオ製品に含まれるメチルキサンチンの含有量


1-3 チョコレートに含まれる脂肪による膵炎
高脂肪の食事は、膵炎と呼ばれる致命的な代謝疾患を引き起こします。主な症状は、嘔吐、下痢、腹痛。チョコレート自体よりも脂肪が問題を引き起こし、ほとんどのチョコレートで起こります。

ホワイトチョコレートにはテオブロミンが含まれていませんので、脂肪分が問題になります。
1-4 チョコレートに含まれるテオブロミンとカフェイン
チョコレートにはテオブロミンとカフェインが含まれているため毒性があります。カフェインはほとんどのチョコレートに含まれており、濃度はテオブロミン含有量の約 10% です。カフェインの影響は摂取後 30 ~ 60 分以内に始まり、テオブロミンは摂取後 2 時間以上経過して現れ、テオブロミンの毒性はカフェインよりも長く続きます. 製品に含まれるカカオ成分が多いほど、テオブロミンが多くなり、 嘔吐 下痢 多動性 振戦 発作 不整脈 重症例では死亡に至ります。
テオブロミンの毒性量は、軽度の場合は犬の体重 1k あたり 18 mg、重度の場合は36mg です。
テオブロミンは
ミルク チョコレートには 1 オンス(28g)あたり 44 mg
ダークチョコレートには 1 オンス(28g)あたり 150 mg
ベーキング チョコレートには 1 オンス(28g)あたり 390 mg が含まれています。
テオブロミンは胃腸 から急速に吸収されますが、チョコレート製品に含まれる脂肪が吸収を遅らせます、チョコレートを大量に摂取すると、胃の中でチョコレートが固まりさらに、吸収が遅くなる可能性があります。犬では、テオブロミンの半減期(17.5時間)カフェインの半減期は約4.5時間です。
キシリトールを含むチョコレートは低血糖と肝不全を併発しますのでさらに危険になります。
2チョコレート中毒の症状
2-1 テオブロミンの摂取量によるチョコレート中毒の症状
>20 mg/kg :興奮および胃腸障害の軽度の兆候 (例、嘔吐、下痢、腹痛)
>40 mg/kg :前述の兆候 (例、頻脈、高血圧) に加えて心臓中毒症の中等度の兆候
>60 mg/kg :前述の兆候 (例、震え、発作) に加えて、神経中毒症の重篤な兆候
チョコレート中毒症状は 12 ~ 36 時間続きますが、高用量では臨床徴候が最大 72 時間続く場合があります。
2-2 犬44頭の研究によるチョコレート中毒の症状
チョコレート中毒の臨床症状:動揺 (33 件)、震え (22 件)、嘔吐 (21 件)、喘ぎ (11 件)、多尿多飲 (7 件)、下痢 (2 件)
チョコレート中毒の臨床所見:洞性頻脈 (28 件)、頻呼吸喘ぎ (14 件)、高体温 (10 件)、脱水 (7 件)
3子犬、胎児への影響
胎盤を通過して乳中に排泄されるため、胎児または授乳中の子犬はチョコレート中毒症の影響を受ける可能性があります
4犬の種類によるチョコレート中毒の差
犬の種類による差は報告されておりませんが、チトクローム P450 酵素 (CYP1A2) が犬種によって型が違い、テオブロミンの代謝および除去能力の低下と関連しており、感受性に個体差があります。
心機能障害のある犬はチョコレート中毒のリスクが高く、発作障害のある犬は中枢神経系への影響のリスクが高いです。
5猫のチョコレート中毒
猫は犬よりチョコレート中毒をおこしやすいです
猫は食習慣(自ら好んで食べない)から、チョコレート中毒はまれですが、犬より危険です。
猫のカフェインの最小致死量は 100 ~ 150 mg/kg です。(犬では140~150mg/kg)
テオブロミンも猫にとって毒性が高く、LD 50は 200 mg/kg です。(犬のテオブロミンのLD 50は 250 ~ 500 mg/kg )
6チョコレート中毒の治療方法は?
6-1吐かせる
食べてすぐであれば、胃の中にあるチョコレートを嘔吐させますので、できるだけ早く来院してください。チョコレートは吸収は遅いため、食べてから 4 ~ 6 時間でも嘔吐させることができます。
6-2解毒させる
チョコレート中毒の解毒方法としては、活性炭吸着剤を用いてチョコレートと結合させ、消化管からの吸収を防ぎ、体外への排出を促します。活性炭の投与は、8~12時間間隔で繰り返し行われます。また、静脈輸液によって尿量を増やし、毒素の排泄を促します。大量のカフェインやテオブロミンが吸収された場合、毒素が処理され体から完全に除去されるまでは入院が必要となります。重症例では死亡することもあります。チョコレートの毒性が完全に抜けるまでには、最低でも4日程度かかります。
大量にチョコレートを摂取した場合は、臨床症状の発現を注意深く観察するために、入院が必要となることがあります。
7チョコレート中毒で家庭でできるこ
7-1排尿をうながす
カフェインは膀胱壁を通って再吸収されるので、症状の持続期間が長くなります。
膀胱をできるだけ空にしてカフェインを排泄させるために、頻繁に散歩に連れだして、排尿させてください。
8チョコレート中毒で死亡することもありますか?
適切な治療を行えば死亡率は3%
チョコレート中毒症を患った 44 頭の犬の報告では、43 頭が治療に成功し、死亡した1頭の犬はテオブロミンの計算上の用量が 64 mg/kg、カフェインの摂取量が 19.7 mg/kg であり、摂取から 12 時間後に頻脈、高体温、発作、嘔吐、低カリウム血症を示しました。
2021英国での調査では早期に適切な治療を行えばチョコレート中毒の死亡率は3%未満でした
犬のチョコレート摂取:156件(2015年~2019年)J Small Anim Pract. 2021年11月;62(11):979-983
9チョコレート中毒で病院に連絡する時は次の4点を教えて下さい
①チョコレートの種類
②チョコレートの量
③犬種、体重、年齢
④摂取してからの時間
食べたチョコレートの量が不明な場合は、残っているチョコレートの量から推定してください。
来院する際には、チョコレートの種類が特定できる空き箱があればお持ちください。
チョコレートは吸収が遅く、特に大量に摂取した場合は胃の中で固まってさらに吸収が遅れることがあります。
チョコレートを食べてから時間が経過している場合でも、催吐処置が可能なことがありますので、まずは動物病院にご相談ください。
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参考文献:
犬のチョコレート摂取:156件(2015年~2019年)
J Small Anim Pract. 2021年11月;62(11):979-983.