こざわ犬猫病院

多頭飼育の猫の栄養管理

多頭飼育の猫の栄養管理 について

複数の猫を飼っているご家庭では、それぞれの猫が異なる健康上の課題を抱えていることがあります。腎臓病、肥満、糖尿病、消化器系の問題、関節炎、尿路結石など、多岐にわたるニーズに対応することは、飼い主様にとって大きな「パズル」となるでしょう。この複雑な課題を解決し、すべての愛猫が健康で幸せな生活を送るための栄養管理についてご紹介します。

 

猫の本来の食生活と栄養の重要性

 

 

猫は絶対肉食動物であり、その食性は彼らの解剖学的、生理学的、行動的な特徴に深く根ざしています 。本来、猫は単独で狩りを行い、1日に何度も少量の食事を摂ります 。理想的な食事は、タンパク質が非常に多く、適度な脂肪、そして豊富な水分を含んでいます 。食事の頻度が少ないと尿のpH変動が大きくなり、尿路結石(特にストルバイト結晶)のリスクが高まることも示されています

また、水は猫にとって最も重要な栄養素であり、食事頻度が高いほど飲水量も増加します 。便秘は脱水症状の兆候であるため、十分な水分摂取は健康維持に不可欠です

 

多頭飼育家庭での栄養管理戦略

 

私たちの目標は、すべての猫が栄養面でリスクなく食事ができるような戦略を立て、共通の基本食を見つけ、その上で各猫の個々の栄養ニーズに1日2回応えることです

 

1. 共通食の選定:最も「栄養的に脆弱な猫」を基準に

 

ご家庭の猫の中で、最も栄養面で脆弱な状態にある猫(例:炎症性腸疾患(IBD)や慢性腸症の猫 )のニーズを最優先に基本食を選びます。

  • IBD/慢性腸症の猫:抗原を制限した食事や消化しやすい食事が推奨されます
  • 慢性腎臓病(CKD)の猫:リンやナトリウムが制限され、オメガ3脂肪酸やカリウムが強化された腎臓病用療法食が利用されます 。ただし、タンパク質制限が強すぎると筋肉量の減少につながる可能性もあるため、猫の筋肉状態を観察しながら、適切なタンパク質レベルの食事を選ぶことが重要です
  • 肥満や糖尿病の猫:高タンパク質、低炭水化物のウェットフードを少量を頻繁に与えることが効果的です
  • 高齢の痩せた猫:11歳を過ぎると代謝エネルギー必要量が増加するため、より高エネルギーで消化性の高い食事が必要です 。サルコペニア(筋肉量減少)のリスクも考慮し、十分なタンパク質摂取が推奨されます
  • 尿路結石症の猫:尿の飽和度を下げるために、適切な尿pHと低い尿比重を維持できるウェットフードなどの食事が重要です

 

2. 給餌方法の工夫

 

  • パズルフィーダーの活用:ドライフードはパズルフィーダーに入れて与えることで、猫の狩猟本能を満たし、過食を防ぎます 。手作りのフィーダーも有効です
  • 少量の頻回給餌:1日に何度も少量を給餌することで、猫の本来の食行動に合わせます
  • 水分摂取の促進:新鮮な水を複数箇所に、フードから離れた場所に設置し、必要に応じてチキンブロスなどで風味をつけましょう 。ウェットフードの活用も水分摂取に繋がります
  • 環境への配慮:トイレの数と清潔さ、十分な大きさ(猫の体長の1.5倍 )を確保し、食事場所を複数設けることで、猫間の競争ストレスを軽減します 。マイクロチップ対応の自動フィーダーや、高さや幅を活用した給餌場所の工夫も有効です

 

3. 個々の猫への対応とモニタリング

  • 猫の好みの尊重:猫が食べない食事は意味がありません 。いくつかの療法食のサンプルを試して、猫の好みを見つけることをお勧めします
  • 段階的なフード変更:フードの切り替えは、急に行わず、5~6週間かけて徐々に新しいフードの割合を増やしていくことが重要です
  • 定期的な評価:体重、ボディコンディションスコア、筋肉コンディションスコア、被毛の状態、排便の変化などを定期的に評価し、栄養管理の効果を確認します 。食欲不振が見られた場合は、早期に対応し、必要に応じて食欲増進剤や栄養チューブの使用も検討します

 

まとめ

 

多頭飼育家庭での猫の栄養管理は複雑ですが、各猫の個別のニーズを理解し、猫の本来の食行動に合わせた工夫を凝らすことで、すべての愛猫が健康で快適な生活を送ることができます。ご不明な点がございましたら、いつでも当院にご相談ください。最適な栄養プランを一緒に考え、愛猫の健康をサポートいたします。

 

役立つリソース

 

  • アメリカ猫科獣医師協会(AAFP)のウェブサイト(catvets.com)
  • 世界小動物獣医師会(WSAVA)の栄養ツールキット
  • アメリカ動物病院協会(AAHA)の犬と猫のための2021年版栄養・体重管理ガイドライン

 

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