こざわ犬猫病院

犬猫のてんかんの重積症

犬猫のてんかんの重積症 について

犬猫のてんかん重積症 は、5 分以上続くてんかん発作活動、または意識の回復を伴わない 2 回以上のてんかん発作の発生です。重積状態になると永久的に脳を損傷し、全身の合併症をおこしますので、直ちに発作を止めなければなりません

眼球圧迫による迷走神経刺激

眼球圧迫は、迷走神経を刺激することで発作の重症度や持続時間を軽減する可能性が示唆されています。

方法: 上眼瞼(まぶたの上)に指の腹で優しく圧力を加え、眼球を眼窩(がんか)の奥に向かってそっと押し戻します。
実施: 片眼または両眼に約10~60秒間圧迫を加え、5分間隔で繰り返すことができます。
適用タイミング: 発作が連続している時、または発作が起こる兆候(前兆)が見られる場合、あるいは疑われる場合に行うことができます

鼻から投与することで 迅速に脳に薬が届き、発作を止めます。

 

当院ではてんかんの既往症がある患者さんで、直ぐに病院を受診できない方には、ご家庭で迅速に発作を止める 鼻から投入する薬を処方しております。

抗てんかん薬を静脈から投与した場合、肝臓で代謝されますが、鼻腔から投与すると肝臓の代謝経路を通さずに直接脳に到達するため、より迅速で高い効果が得られます。

てんかん発作を持つ犬猫を飼っている方は、万が一の時のために、鼻腔内投与薬を常備しておくようにしてください。
参考文献:
犬のてんかん重積状態の管理におけるミダゾラム経鼻投与とジアゼパム直腸投与の比較:多施設共同ランダム化並行群間臨床試験

当院は夜間も年中無休で緊急対応しております


抗てんかん剤を 鼻から投与する動画↓
鼻腔内 投与法 動画

気圧と犬のてんかん発作

犬のてんかんにMCTオイル

犬と猫のてんかん重積状態に関する参考文献一覧

本記事は、以下の学術論文や専門家の発表を参考に執筆しました。

【てんかんの定義、分類、および疫学】

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【てんかん重積のモニタリングと予後】

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【専門家の発表とレビュー】

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  • フレッチャー, D.J. (2016). 重症急性発作の管理. アトランティック・コース獣医学会議2016議事録.

 

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