こざわ犬猫病院

猫の原発性アルドステロン症

猫の原発性アルドステロン症 について

最終更新日 : 2026年11月6日

原発性アルドステロン症(PHA)は、猫において最もよく見られる「副腎(ふくじん)」の疾患です。 腎臓のそばにある副腎から「アルドステロン」というホルモンが過剰に分泌されることで、体内のカリウムが失われ、同時にナトリウムと水分が過剰に蓄えられて高血圧を引き起こします。慢性腎臓病(CKD)と症状が非常に似ているため、慎重な鑑別診断が必要となります。

診察台で頭を床付近まで下げて座る(頸部腹側屈曲)キジトラ猫のイラスト。猫の原発性アルドステロン症による低カリウム血症と筋力低下の症状を解説しています。
低カリウム血症による重度な筋力低下で、頭を持ち上げられなくなる「頸部腹側屈曲」

主な原因

  • 副腎腫瘍:片側、またはまれに両側の副腎にできる腫瘍(良性の腺腫、または悪性の腺癌)による自律的なホルモン分泌。

  • 特発性過形成:副腎の組織(球状帯)が過剰に増殖してしまう状態(両側性に多い)。

主な症状

主に「低カリウム血症」と「全身性動脈性高血圧」による症状が現れます。ただし、すべての猫に明確な症状が出るわけではありません。

1. 低カリウム血症による症状(筋力低下)

低カリウム血症による重度の筋力低下で、頭を床付近まで下げて座っている猫(頸部腹側屈曲)
筋力低下により頭を持ち上げられなくなった状態(頸部腹側屈曲)。原発性アルドステロン症などの疾患による重度な低カリウム血症で見られる特徴的なサインです。

カリウムが不足することで、神経や筋肉に影響が出ます。

  • 首が下がる(頸部腹側屈曲):頭を持ち上げられなくなる特徴的な症状です。

  • 歩行異常:かかとを床につけて歩く(骨盤肢の足底接地姿勢)、ふらつく、ジャンプできなくなる。

  • 全身の脱力:ぐったりする、重度の場合は麻痺や呼吸困難を起こすこともあります。

2. 全身性高血圧による症状

血圧が異常に高くなることで、特に眼に症状が出やすくなります。

  • 眼の異常:眼内出血、網膜剥離による突然の失明、瞳孔が開いたままになる(散瞳)。

3. その他の症状

  • 多飲多尿(お水をたくさん飲み、おしっこが増える)、体重減少、食欲不振、腹部膨満など。

診断について

他の疾患(特に慢性腎臓病)を除外し、以下の検査を組み合わせて総合的に診断します。

  • 血液・生化学検査:低カリウム血症の有無、腎臓の数値(尿素、クレアチニン)やCK(クレアチンキナーゼ)の上昇を確認します。

  • 血圧測定:全身性の高血圧が起きていないかを確認します。

  • 画像診断:副腎の腫大や腫瘍の有無、周囲の血管への浸潤がないかを確認します。微小な過形成の場合は画像検査で異常が見られないこともあります。

  • 内分泌(ホルモン)検査:血液中の「血漿アルドステロン濃度(PAC)」を測定します。著しい上昇(一般的に1000 pmol/L以上)があれば本疾患を強く疑います。

治療方法

原因(片側の腫瘍か、両側の過形成か)や猫ちゃんの全身状態によって、以下の治療法を選択します。

1. 外科的治療(手術)

  • 血管が豊富でデリケートな部位のため、出血や血圧低下などのリスクの高い手術となります。

2. 内科的治療(お薬での管理)

  • 手術が難しい場合や、両側性の過形成が原因の場合に選択されます。

  • アルドステロン拮抗薬(スピロノラクトン):アルドステロンの過剰な働きをブロックします。

  • カリウム剤(グルコン酸カリウムなど):不足しているカリウムを飲み薬で補います。

  • 降圧剤(アムロジピンなど):高血圧が認められる場合に使用し、血圧をコントロールします。

  • 完治させるものではないため、生涯にわたる投薬と定期的な検査・モニタリングが必要になります。

ご家族の方へ 原発性アルドステロン症は、早期に発見し適切な治療を行えば、猫ちゃんが元気な生活を取り戻せる可能性が十分にある病気です。「最近ジャンプしなくなった」「首が下がっている」「急に目が見えにくそう」などの症状が見られたら、お早めにご相談ください。

参考文献

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