猫白血病(FeLV)は治らない?新薬「ラルテグラビル」でQOLを高める治療
猫白血病(FeLV)は治らない?新薬「ラルテグラビル」でQOLを高める治療 について
最終更新日 : 2026年10月19日
猫白血病ウイルス(FeLV)は、進行すると免疫力の低下や貧血、腫瘍などを引き起こす厄介なウイルスであり、飼い主様にとっても非常に不安の大きい病気です。 当院では、FeLV進行性感染症の猫ちゃんに対する新たな治療アプローチとして、抗ウイルス薬「ラルテグラビル」を用いた治療を取り入れています

■ ラルテグラビルとはどんなお薬?
ウイルスの増殖に不可欠な「インテグラーゼ」という酵素の働きを強力にブロックするお薬(インテグラーゼ阻害剤)です。ウイルスのDNAが猫ちゃんの細胞に組み込まれるのを防ぐことで、体内でのウイルス増殖を初期段階で食い止めます。
元々は人間のHIV治療薬として日本国内で認可され、医療機関で広く処方されている実績のあるお薬を使用しています。
■ 期待できる効果と治療の目的
-
ウイルス量の低下 数週間〜数ヶ月の継続投与により、血中のウイルス量(RNAおよびプロウイルスDNA)を減少・抑制させます。
-
全身症状の安定化とQOL(生活の質)の向上 ウイルスによる体への負担を軽減し、食欲の低下や体重減少(BCSの低下)などの症状を回復・安定させる効果が期待できます。
【※知っておいていただきたいこと】 本薬はウイルスを完全に体内から排除(完治)するものではありません。また、現時点の獣医学データでは、統計的に明確な「生存期間の延長(延命効果)」までは実証されていません。あくまで「症状を安定させ、猫ちゃんが穏やかで苦痛のない生活を送れるようにすること」を最大の目的として処方いたします。
■ 飼い主様へのお願い(治療上の重要な注意点)
ラルテグラビルによる治療は、「継続投与」が何よりも重要です。 自己判断でお薬を途中でやめてしまうと、抑え込まれていたウイルスが急激に増殖(リバウンド)し、状態が一気に悪化してしまうリスクがあります。お薬は必ず獣医師の指示通りに毎日飲ませてあげてください。 また、重篤な副作用は稀で比較的安全なお薬ですが、飲み始めに嘔吐などが見られる場合があります。気になる症状があれば、すぐにご相談ください。
FeLVと診断され、今後の治療方針や体調管理でお悩みの飼い主様は、ぜひ一度当院までご相談ください。猫ちゃんごとの状態に合わせた最善のサポートをご提案いたし
Q. ラルテグラビルとはどのようなお薬ですか?
元々は人間のHIV治療薬として日本国内で認可され、医療機関で広く処方されている実績のあるお薬を使用しています。
Q. 治療により猫白血病(FeLV)は完治しますか?
Q. 薬の費用はどのくらいですか?どのように飲ませますか?
お薬は飲ませやすいよう粉状で処方いたしますので、ちゅーるなどのペースト状のおやつやウェットフードに混ぜて与えていただきます。
Q. 通院の頻度や検査について教えてください。
Q. 症状が良くなったら、薬をやめてもいいですか?
Q. 陽性と診断されましたが現在は無症状です。今のうちから飲ませた方が良いですか?
しかし、同じレトロウイルスである人間のHIV感染症の治療ガイドライン(※)においては、無症状の段階であっても本薬の早期投与が推奨されています。そのため当院では、今後の発症リスクを少しでも抑える目的で、無症状期からの治療開始を選択肢としてご提案しております。※参考:抗HIV治療ガイドライン(厚生労働省エイズ対策政策研究事業)
Q. 副作用はありますか?
Q. 遠方におり通院が難しいのですが、お薬だけの処方は可能ですか?
そのため、お薬を処方するためには必ず一度、当院で直接診察を受けていただく必要があります。一度ご来院いただいて診察を行った後の継続処方につきましては、かかりつけの先生(主治医)と連携した上での対応をご相談可能です。まずは一度、お電話にてお問い合わせください。
Q. ラルテグラビルはどの病院で処方してもらえますか?
ワンちゃんの声やにおいが苦手な猫ちゃんは、静かな環境で受診できる猫専門のバステトへご相談ください。
参考文献
- Chiu ES, Hoover EA, VandeWoude S: ネコ白血病サブグループの特徴付けに関する回顧的検討:ウイルス干渉アッセイからディープシーケンスまで。Viruses 2018 Vol 10 (1) pp. 29. [DOI]
- Stützer B, Simon K, Lutz H: リンパ腫を患う猫における持続性ウイルス血症および潜在性猫白血病ウイルス感染の発生率。J Feline Med Surg 2011 Vol 13 (2) pp. 81-87. [DOI]
- Powers JA, Chiu ES, Kraberger SJら: 飼い猫繁殖コロニーにおける猫白血病ウイルス(FeLV)疾患の転帰:内因性FeLVおよびその他の慢性ウイルス感染症との関連。J Virol 2018 Vol 92 (18). [DOI]
- Little S, Levy J, Hartmann K, et al: 2020 AAFP 猫レトロウイルス検査および管理ガイドライン。J Feline Med Surg 2020 Vol 22 (1) pp. 5-30. [DOI]
- Chiu ES, Kraberger S, Cunningham M, 他: 絶滅危惧種のフロリダパンサーにおける飼い猫白血病ウイルスの複数回の導入。Emerg Infect Dis 2019 Vol 25 (1) pp. 92-101. [DOI]
- Filoni C, Helfer-Hungerbuehler AK, Catão-Dias JL, et al: 飼育下のジャガーランディ (Puma yagouaroundi) におけるネコ白血病ウイルス感染の進行性および不完全感染の結果の可能性。Virol J 2017 Vol 14 (1) pp. 226. [DOI]
- Hofmann-Lehmann R, Hartmann K: 猫白血病ウイルス感染症:診断への実践的アプローチ。J Feline Med Surg 2020 Vol 22 (9) pp. 831-46. [DOI]
- Cattori V, Randon R, Riond Bら: 実験的に感染させたネコにおけるネコ白血病ウイルス排出の動態は感染結果と関連している。Vet Microbiol 2009 Vol 133 (3) pp. 292-96. [DOI]
- Stone AES, Brummet GO, Carozza EM, 他: 2020 AAHA/AAFP ネコワクチン接種ガイドライン。 J Feline Med Surg 2020 Vol 22 (9) pp. 813-30. [DOI]
- Abdollahi-Pirbazari M, Jamshidi S, Nassiri SM, et al: 血液学的血球減少症の猫の血リンパ組織におけるFeLV負荷の比較測定。BMC Vet Res 2019 Vol 15 (1) pp. 460. [DOI]
- Kornya M, Bienzle D, Beeler-Marfisi J: 血液疾患のある21匹の猫におけるFeLV p27免疫測定法とPCR検査結果の不一致。J Feline Med Surg 2023 Vol 25 (7) pp. 1098612X231183297. [DOI]
- Giselbrecht J, Jähne S, Bergmann M, et al: ヨーロッパ4カ国におけるネコ白血病ウイルス感染症の様々な転帰の有病率。European Coll Vet Int Med – CA Proceedings 2022. (※学会プロシーディングス)
- Biezus G, de Cristo TG, da Silva Casa M, et al: ブラジル南部の猫における猫白血病ウイルス(FeLV)の進行性および退行性感染:有病率、関連する危険因子、臨床的および血液学的変化。Prev Vet Med 2023 Vol 216 (0) pp. 105945. [DOI]
- Yoshino Y, Chambers JK, Nakamori T, et al: 猫におけるホジキンリンパ腫様形態を伴う原発性小脳リンパ腫(Primary cerebellar lymphoma with Hodgkin lymphoma-like morphology in a cat)。J Vet Diagn Invest 2017 Vol 29 (5) pp. 707-710. [DOI]



