こざわ犬猫病院

猫のワクチン

猫のワクチン について

猫のワクチン接種プログラム
*初回接種プログラム:
生後2ヶ月で3種混合ワクチン(1回目)を接種。
生後3ヶ月で3種混合ワクチン(2回目)を接種。

* 定期接種:
2回目接種の1年後から、毎年定期接種を行う

*アジュバントを含むワクチンを使用しない

猫にアジュバントを含むワクチンを接種すると腫瘍を発症するリスクがあるため、アジュバントを含むワクチンは絶対に使用しない。

*全米猫医師協会 全米動物病院協会のガイドラインに沿った部位に注射する

背中や肩甲骨付近ではなく、後ろ脚、しっぽに注射しなければいけません

*ワクチン副反応の原因となるBSE濃度が低いワクチンを使用する。

目次

猫のワクチン接種時期と回数

猫のワクチン注射部位肉腫

〇ワクチン接種部位

〇アルミニュウムアジュバンド

猫のワクチンが腎不全の原因

猫のワクチン副反応

当院では可能な限りリスクのないワクチンを接種しております。

猫のワクチン接種の効果

猫のワクチン接種時期と回数

すべての動物の赤ちゃんも免疫系が未熟な状態で生まれます。自然界では初乳(出産後最初の数日間母親が出す乳)に含まれる抗体で身を守ってくれますが、子猫が必ず初乳を摂取できるわけではありません。

母猫の免疫がある間、注射されたワクチンは効果がなくなってしまいますので、母親の抗体が十分に低下する生後2か月まで、ワクチンは接種できません。

ワクチン接種は通常、生後8週間程度で始まり、子猫が生後約3か月になるまで4週間ごとに2回接種します。 2回ワクチン接種を行う理由は、母猫の抗体が弱まる時期がさまざまであるためです。生後 14 ~ 20 週までに母猫の抗体はなくなり、ワクチン接種によって、免疫システムを維持できるようになります。

当院では、生後2ヶ月で3種混合(1回目)、生後3ヶ月で3種混合(2回目)を接種します。2回目接種の1年後から毎年定期接種します。

猫のワクチン注射部位肉腫

ワクチン接種部位

全米猫医師協会の報告では、0.01%の割合で猫ワクチン接種をした部位が盛り上がって肉腫ができてしまうことがあります。

ガイドラインに沿った場所に接種してください。

リンククリック☛猫の予防接種ガイドライン

猫のワクチンは 背中や肩甲骨付近ではなく、後ろ脚、しっぽに注射しなければいけません

猫のワクチン接種推奨部位
AAFP(全米猫獣医師協会)によるワクチン接種推奨部位と非推奨部位

図は、AAFP(全米猫獣医師協会)が推奨しているワクチン接種部位です。緑色の部分が推奨部位、バツ印の付いた部分が非推奨部位になります。万が一背中に悪性腫瘍が出来てしまった場合、手術で切除するのが非常に難しくなるという観点から、背中や肩甲骨付近ではなく、脚の先端、しっぽに注射しなければいけません。飼い主様は前回のワクチン注射を体のどの部位に行ったかを記録しておくようにします。

 

猫のワクチン接種:アジュバントフリーワクチンの重要性

アルミニウムアジュバント


 

①当院では、猫のワクチン接種において、誘発因子であるアルミニウムアジュバントを含まないアジュバントフリーワクチンを使用しています。

電子プローブ微量分析により、腫瘍マクロファージ内にアルミニウムアジュバント粒子が同定されており、アルミニウムが炎症とは独立して発がんに寄与する可能性が示唆されています (AbdelMageed et al. 2017)。実際に、スイスでは非アジュバント猫ワクチンの使用増加に伴い、猫における注射部位肉腫が減少したことが報告されています (Graf et al. 2018)。

2020年のAAHA(全米動物病院協会)とAAFP(全米猫獣医師学会)の猫ワクチン接種タスクフォースも、アジュバント添加ワクチンがアジュバント無添加ワクチンよりもリスクが高い可能性を示唆する証拠に同意しています (Stone et al. 2020)。

長年の研究から、アジュバントを含むワクチンは注射部位に持続的な炎症を引き起こし、遺伝的に腫瘍形成の素因がある猫の危険性を高めることが分かっています。猫の疫学研究では、アジュバントを含むワクチンを使用した場合、そうでない場合と比較して、腫瘍形成のリスクが10倍高いというエビデンスが示されています。

これらの理由から、猫にアジュバントを含むワクチンは絶対に避けるべきです。

 

猫の進行性間質性腎不全

猫のワクチン製造の段階で猫腎臓細胞(CRFK)利用


 

ワクチン製造における猫腎臓細胞(CRFK)不使用について

②当院では、ワクチン製造の段階で猫腎臓細胞(CRFK)を利用していないワクチンを使用しています。

これは、猫の進行性間質性腎不全が老齢猫の50%に見られる疾患であり、その原因の一つとして、猫腎臓(CRFK)細胞株を利用して製造された猫ワクチンが危険因子となる可能性があるためです。

猫の腎不全リスクを低減するためにも、当院では猫腎臓(CRFK)細胞株を使用しないワクチンを選んでいます。

 

猫ワクチン副反応

ワクチンのBSE濃度


 

③当院ではBSE濃度が最も低いワクチンを使用しております。

ワクチン副反応の一番の原因はBSEと言われています。初回ワクチンは追加ワクチンよりも副反応に敏感で。初回ワクチン接種は抗原特異的リンパ球のクローンの増殖を刺激しますが、追加ワクチン接種は抗原特異的リンパ球のクローン増殖に対する刺激が弱いです。最初のワクチンで副反応反応がでなかった場合追加ワクチン接種の副反応の可能性は低くなります。最初の反応がアナフィラキシーであった場合は、ワクチン接種の必要性を評価検討してください。ワクチン接種時に猫が軽度の感染症にかかっている場合、炎症誘発性サイトカインがすでに放出されているため、副反応が起こる可能性が高くなります。

 

当院では可能な限りリスクのない猫のワクチンを接種しております。

①ワクチン製造段階で猫腎臓細胞(CRFK)を利用していない

②アルミニュウムアジュウバンドを含有しない

③ワクチン副反応の原因となるBSE濃度が最も低いワクチンを使用しております

猫のワクチンに含まれるBSA量
当院ではBSE濃度が最も低いA社のワクチンを使用しております

猫のワクチン接種の効果

ワクチン接種は病気から完全に守ることはできませんが、   ワクチン接種を受けた猫や子猫がウイルスにさらされても、ワクチン接種を受けていない猫に比べて病気の症状が軽くなることが実証されてます。

参考文献一覧

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