猫の便秘
猫の便秘 について
猫の便秘:原因、症状、そして適切な対処法
猫の便秘は、飼い主さんが心配になる症状の一つですが、時折起こる軽度な便秘であれば過度に心配する必要はありません。しかし、便秘が続く場合や、猫が苦しそうにしている場合は、適切な対処が必要です。
猫の便秘とは?どんなサインがある?
便秘の猫は、便が異常に硬くなり、排便時にいきむ様子が見られます。通常のトイレとは異なる場所で硬い便が見つかることもあります。
ただし、いきんでいるからといって必ずしも便秘とは限りません。 排尿しようとしていきむのは、多くの場合、緊急事態(尿路閉塞など)のサインであるため、排尿に疑問がある場合はすぐに動物病院を受診してください。
「数日排便がないだけなら、もう少し待ってもいい」 と考える飼い主さんもいらっしゃるかもしれませんが、猫の結腸(大腸)は便を一時的に蓄える場所です。排便の頻度は猫によって異なるため、普段の排便リズムを把握しておくことが大切です。
市販薬の使用は絶対に避けて!
「早くどうにかしてあげたい」という気持ちから、ドラッグストアで人間用の浣腸や下剤を購入しようと考える方もいるかもしれません。しかし、市販されている人間用の便秘薬の中には、ペットにとって有毒な成分が含まれているものが多数存在します。
獣医師の特別な指示がない限り、人間用の便秘薬(浣腸、下剤など)を猫に使用することは絶対に避けてください。 重篤な健康被害を引き起こす可能性があります。
猫が便秘になる主な原因
猫が便秘になる理由は様々です。
- 毛づくろいによる毛の摂取: 特に痒みがある場合などに過度に毛づくろいをすることで、大量の毛を飲み込んでしまうことがあります。この毛が便と混ざり、硬い便となって排便を妨げることは珍しくありません。この場合は、過度な毛づくろいの原因を治療することで改善が見られることがあります。
- 内臓の病気: 何らかの内臓疾患が便秘の原因となっている可能性もあります。
- 過去の骨盤骨折: 交通事故などで骨盤を骨折した経験がある猫の場合、骨折が手術なしで治癒したとしても、便が通過する骨盤管が狭くなっていることがあります。最初の外傷から何年も経ってから便秘の症状が現れることもあります。古い骨折は、腹部のX線検査で確認できることが多いです。
猫の便秘治療:動物病院での対処と自宅でのケア
急性便秘の治療
単発的な便秘症状であれば、動物病院での浣腸で比較的簡単に解決することが多いです。浣腸はご自宅で無理に行わず、必ず動物病院に任せてください。
慢性・繰り返す便秘の治療
繰り返す便秘の場合は、より長期的な管理が必要となります。診断のために血液検査や腹部X線検査が行われます。治療は、薬や食事の変更、あるいはより頻繁な浣腸が必要になることもあります。
【主な治療アプローチ】
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食事によるアプローチ
- 食物繊維の追加: 繊維は腸管で吸収されず、結腸に送られて便の量を増やします。これにより、より大きく、かさ高い便が生成され、排泄時に結腸への刺激が強まることで、結腸の運動性が改善される可能性があります。この目的のために処方された高繊維食に切り替えるのが最も簡単です。 もし処方食を食べてくれない場合は、獣医師に相談の上、通常の食事に缶詰のパンプキン(カボチャ)やふすまシリアルなどを少量加えることもできます。どれくらいの量を加えるべきかは、必ず獣医師に相談してください。
- 低残渣食への変更: もう一つの方法は、便が小さい方が結腸の機能が向上するという考えに基づき、低残渣(消化率が高い)のフードを使用することです。これにより、より多くの栄養素が吸収され、便として排泄される未消化の物質が減ります。便秘の原因の一つは、結腸で水分が吸収されて便が乾燥してしまうことですが、低残渣食は便の水分を保ち、より柔らかい便を作るのに役立ちます。
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薬剤によるアプローチ
- ラクツロース: 便を柔らかくする作用を持つ薬です。ただし、甘みが強く濃厚な液体であるため、猫によっては味が苦手で、飲ませる際に口周りの毛を汚してしまうこともあります。
- ビサコジル: 骨盤神経を刺激することで、結腸の運動性を高める作用があります。
- ポリエチレングリコール (PEG): 便の形成中に体から腸管へ水分を引き込むことで、より水分を多く含んだ柔らかい便にする薬です。通常、1日2回食事に混ぜて与えます。効果的な用量を見つけるには調整が必要な場合もありますが、比較的飲ませやすく、多くの獣医師が推奨しています。
- モサプリド: 消化管の動きを改善する薬で、反応に応じて広い用量範囲で使われます。効果が見られない場合は用量を増やすことがあります。
猫の便秘は、放置すると深刻な健康問題につながることもあります。愛猫の便秘に気づいたら、自己判断で市販薬を使用せず、必ず適切な診断と治療を受けるようにしましょう。
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結腸内に大きな便塊が見られます。
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