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犬の気管虚脱 

犬の気管虚脱  について

犬の気管虚脱ってどんな病気?

愛犬がアヒルのような「ガーガー」という咳をしたり、呼吸が苦しそうにしていませんか?それはもしかしたら、犬の気管虚脱のサインかもしれません。

犬の気管は、鼻や口から肺へと空気を通す大切なパイプです。このパイプは、C字型の軟骨の輪(軟骨輪)と筋肉で支えられています。通常、この軟骨はしっかりとしていますが、気管虚脱ではこの軟骨輪が弱くなり、フニャフニャと柔らかくなってC字の形を保てなくなってしまいます。

その結果、気管が潰れて閉塞し、空気がスムーズに通らなくなります。気管の内膜が互いに触れ合うことで、「ガーガー」という特徴的な咳が発生し、呼吸が妨げられると愛犬は苦痛を感じるようになります。

気管が潰れると、分泌物が増えて炎症が起き、さらに咳が出やすくなります。この炎症が、気管の軟骨をさらに柔らかくしてしまう悪循環に陥ることも。特に、気管が胸に入る部分で最も虚脱が悪化しやすいと言われています。

犬の気管虚脱は内科治療薬で治癒しますか?

これまで、犬の気管虚脱の治療は、咳止めや気管拡張剤の投与、体重管理、あるいは外科手術が中心でした。しかし、この度、新しい治療薬(アナボリックステロイド)が登場し、多くの愛犬と飼い主さんに希望をもたらしています。

犬の気管虚脱 アナボリックステロイド治癒
犬の気管虚脱アナボリックステロイド治癒効果

アナボリックステロイドの内服薬が、犬の気管虚脱の症状を大幅に改善する

最新の研究では、アナボリックステロイドの内服薬が、犬の気管虚脱の症状を大幅に改善するという驚くべき結果が報告されています。この研究によると、アナボリックステロイドの内服薬で50%以上の犬で咳が完全に止まり、さらに30%の犬で症状の改善が見られたとされています。

アナボリックステロイドは、気管軟骨細胞および線維芽細胞によるTGFβ-1(トランスフォーミング成長因子ベータ1)合成増加を誘導することで扁平になった気管を正常な形に戻します。

当院では、犬の気管虚脱にアナボリックステロイド内服薬を2011年より既に処方しており、非常に効果的な治療法として多くの症例で成果を上げています。

■犬の気管虚脱:本当に手術が必要なのか?100症例の調査:手術は保存的治療に反応しない犬に対してのみ行うべきです。🔗https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/j.1748-5827.1994.tb01685.x

愛犬の咳が気になったら、まずはご相談ください

目次

1 犬の気管虚脱どの犬種に多い?
2 犬の気管虚脱の原因
  犬の気管虚脱の二次的要因
  犬の気管虚脱の原因 タバコの煙
  犬の気管虚脱 グレード
3 犬の気管虚脱の症状
4 犬の気管虚脱の診断
5 犬の気管虚脱一般的な治療方法
  環境を変えましょう
  内科治療
  外科治療
6 犬の気管虚脱の80%が改善する内服薬
  アナボリックステロイドの作用機序
  TGF-β1とは
7 犬の気管虚脱は肝臓疾患になる
  なぜ気管虚脱から肝臓疾患なるのですか?

1 犬の気管虚脱どの犬種に多い?

チワワ、ヨークシャー・テリア、トイ・プードル、ラサ・アプソ、ポメラニアン、シーズーがよく罹患します。

■ある研究では、気管虚脱と診断された犬の86%がヨークシャー・テリアでした

■別の研究では、39%がヨークシャー・テリア、24%がポメラニアンでした

​■ほとんどの犬は、診断時に中高年齢です。主にヨークシャー・テリアを対象としたある研究では、臨床症状が発症する年齢の中央値は2.6歳と報告されました。より多様な犬種を対象とした別の研究では、平均年齢は8.8歳でした。

2 犬の気管虚脱の原因

小型犬の気管虚脱:遺伝と軟骨の関連性

​トイ犬や小型犬で気管虚脱の罹患率が高いことは、遺伝的要因が関与しています。研究では気管虚脱の症状があるヨークシャー・テリア8頭のうち7頭に、染色体3番にある遺伝子「エンドフィン」の有害な多型(変異)が見つかりました。一方、健康な対照群の犬にはこの変異は全く認められませんでした。

​さらに、気管虚脱のヨークシャー・テリア41頭と、発症していないもののリスクのある他犬種59頭を対象とした遺伝子解析の結果、エンドフィンの変異がヨークシャー・テリアの気管虚脱と有意に関連していることが明らかになりました。エンドフィンは骨や軟骨の形成を制御する遺伝子です。そのため、その機能不全は軟骨の変性や機能不全を引き起こし、結果として気管虚脱につながる可能性があります。

​犬の気管虚脱と軟骨の脆弱性

​気管虚脱を発症した犬は、気管軟骨に含まれるコンドロイチン硫酸、糖タンパク質、グリコサミノグリカンなどが不足し、軟骨が脆弱になっている場合があります。また、カルシウムの結合能の低下や、硝子軟骨が線維軟骨に変化することも、気管虚脱の一因となることがあります。さらに、軟骨細胞の機能が異常に低下したり、軟骨の基質成分の産生量が減ったりすることも、気管軟骨の完全性を損なう可能性があります。


犬の気管虚脱の症状は、軽いものから完全につぶれてしまうものまでさまざまで、影響を受ける範囲や長さによっても変わります。虚脱は「動的な状態」であり、呼吸による胸の中の圧力の変化が関係しています。
息を吸うときには、横隔膜と胸の筋肉が動いて胸郭が広がり、肺に空気が入ります。その際に胸の中は陰圧(引っ張られる力)となり、首の部分にある弱くなった気管軟骨はつぶれやすくなります。逆に息を吐くときには、肺と胸郭の反動で胸の中の気管(および主気管支)に圧力がかかり、胸の中の気管の虚脱が悪化します。


■気管の虚脱や狭窄を引き起こすメカニズムにベンチュリー効果があります。

​ベンチュリー効果とは、流体が狭い管を高速で流れる際に、その部分の圧力が低下する現象です。気管虚脱の場合、これが気道内で発生し、高速の気流が負圧を生み出し、気管の狭窄をさらに悪化させます。この原理は、飛行機の翼が揚力を得る仕組みと同様で、翼の上を流れる速い気流が吸引効果を生み出すことによって説明できます。

物理の法則によると、空気の通り道が半分に狭くなると、空気の流れに対する抵抗は2倍ではなく16倍に増えます。つまり、気管の直径が50%つぶれた犬では、通常の換気を維持するために呼吸筋が16倍もの力を発揮しなければならないのです。

気管虚脱のある犬の多くは、二次的な問題がなければ症状をだしません。

二次的に症状を起こす要因

■肥満
■気管内チューブの留置を伴う麻酔
■呼吸器感染症の発症
■アレルギー疾患
■マイコプラズマ
■空気中の呼吸器刺激物質の増加(タバコの煙、粉塵など)
■心臓肥大(心臓が大きくなりすぎて気管を圧迫する場合があります)

上記のような二次的要因により気管虚脱が問題となる場合は二次的要因を取り除く(減量プログラム、空気清浄機設置 抗生物質 アレルギー治療)ことで気管虚脱の症状が解消される可能性がありますので、外科治療に前に必ず行ってください。

犬の気管虚脱の原因 タバコの煙:
気管虚脱の原因 タバコの煙

気管虚脱 グレード
犬の気管虚脱 グレード

犬の気管虚脱 グレード

犬の気管虚脱は、その重症度によって以下の4つのグレードに分類されます。
グレードI: 気管膜がわずかに下垂しているものの、軟骨の形状は正常に保たれています。気管内腔の断面積は**約25%**減少します。
グレードII: 気管膜の下垂が進行し、軟骨が部分的に扁平化します。気管内腔の断面積は**約50%**減少します。
グレードIII: 気管膜が腹側の軟骨にほぼ接触するまで垂れ下がり、軟骨は著しく扁平化します。気管内腔の断面積は**約75%**減少します。
グレードIV: 軟骨が完全に扁平化し、反転することもあります。これにより、気管内腔はほぼ完全に閉塞されます。


犬の気管虚脱と合併症

​犬の気管虚脱は、併発疾患(併発症、基礎疾患)の可能性が高く、これらが心肺の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。

​併発疾患(合併症)

​気管虚脱の犬で報告されている主な併発疾患には、以下のものが含まれます。

​■呼吸器系・喉頭の疾患
​喉頭麻痺(最大 30% の同時発生が示されている研究あり)
​軟口蓋の延長
​喉頭小嚢の外反(喉頭球状部の外反)
​■心臓・循環器系の疾患
​心内膜症
​心雑音(ある調査では 33%、別の研究では 42% で確認)
​心拡大(ベースラインで 43% に病歴があったとする報告あり)
​心疾患(ある報告では 29% に併発)
​■その他の疾患
肥満(ある報告では 36% が該当)
​歯周病
肝腫大

3 犬の気管虚脱の症状

軽い場合は、慢性的な咳がみられます。重症になると、運動するとすぐに疲れる、息を吸うときまたは吐くときに呼吸が苦しくなる(虚脱の部位による)、舌や粘膜が紫色になる(チアノーゼ)、さらには失神することもあります。激しい咳の後に吐き気や嘔吐を訴えることもあり、これが末期の嘔吐と誤解されることもあります。重度では突然死に至るケースもあります。


症状は時間の経過とともに悪化していくことが多く、咳は興奮や運動をきっかけに発作的に起こりやすいのが特徴です。犬によっては、急激に重症化するケースもあります。
動物病院での診察時には、自発的に咳をしていることもあれば、気管を軽く触るだけで誘発されることもあります。咳の音は特徴的で、「ガチョウの鳴き声」や「アザラシの吠え声」に例えられることがあります。呼吸困難が伴うこともあります。
また、多くの犬で心雑音や肥満が同時に見られます。聴診で「ゼーゼー」といった喘鳴や気管支音の増加が認められる場合は、慢性気管支炎などの気管支疾患が併発している可能性もあります。


4 犬の気管虚脱の診断

レントゲン検査(X線撮影)を行うことが重要です。犬の咳の原因には、慢性気管支炎、僧帽弁閉鎖不全症に伴う左心房拡大による気管支圧迫、肺炎など多数の可能性があり、レントゲンはそれらの病気を除外する補助的な情報を与えてくれます。


気管虚脱が疑われる場合は、吸気時と呼気時それぞれで頸部と胸部を撮影して評価します。頸部の虚脱は吸気時に、胸郭内の虚脱は呼気時に最もはっきり現れます。

レントゲン検査

胸郭外気管:吸気時に虚脱し、呼気時に拡張する傾向があります。
胸郭内気管:呼気時に虚脱し、吸気時に拡張する傾向があります。

犬の気管虚脱
犬の気管虚脱のレントゲン検査 ⇒細く虚脱した胸部気管の虚脱
気管虚脱 頸部
犬の気管虚脱 ⇒細く虚脱した頸部気管の虚脱

5 犬の気管虚脱一般的な治療方法

まずは環境を変えましょう

■飼い主様がタバコをやめる、
■減量プログラムを開始する(肥満が一番の原因)
■首輪を止めてハーネスにする
■強い匂いも原因になります 香水 洗剤 床ワックス等も 止めてください

内科治療

気管虚脱のあるすべての患者では、まず内科的治療を行います。

犬の気管虚脱:本当に手術が必要なのか?100症例の調査:手術は保存的治療に反応しない犬に対してのみ行うべきです。症例の71%は内科治療で管理ができます。 🔗https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/j.1748-5827.1994.tb01685.x


抗生剤

■気管虚脱の犬は、気道から感染性微生物を除去することができなくなりますので、
感染症を治すために定期的に抗生物質が必要になります。その際、抗生物質の種類の選択が重要になります。気管気管支分泌物および気管、気管支上皮への浸透性が高い抗生物質を使用しなければ効果は有りません。
■犬の気管虚脱には、マイコプラズマと言う細菌が関与している事が非常に多いので、マイコプラズマに効果の高い抗生剤の投与も必要です。マイコプラズマは犬から、人への感性が問題になっています。
🔗NHK:マイコプラズマは人への感性でも問題になっています。

コルチコステロイド

■コルチコステロイドの飲み薬は粘液の分泌を効果的にカットしますが、副作用の可能性があるため、短期的にのみ使用します。

気管虚脱 吸入治療
吸入治療

■犬の気管虚脱に、喘息に使用する吸入器を用いることで、副作用を最小限に抑えながらコルチコステロイドを投与することができます。フルチカゾンプロピオン酸エステルは、経口のコルチコステロイドよりも副作用が少ないとされており、スペーサーを介して、1回1〜2噴霧を6〜12時間ごとに投与します。

咳嗽および気管虚脱を呈する犬30匹における吸入フルチカゾンと経口プレドニゾンの比較試験

ステロイドの吸入治療
犬の気管虚脱に用いる、ステロイドの吸入治療は副作用が最小限です。気管虚脱の60%はアレルギーを持っています。

■咳をする犬の60%に末梢血液に好酸球の増加が認められていますので、何らかのアレルギー疾患が関係していると考えられています。

鎮咳薬(咳止め)

■鎮咳薬は、咳を抑制することで気管への機械的刺激を軽減し、症状の悪循環を断ち切ります。ヒドロコドン鎮咳薬として用いられます
■ブトルファノールは、犬の気管虚脱に有効な鎮咳薬です。
■マロピタント(セレニア®)の鎮咳効果
麻薬性の咳止め薬に代わる新しい選択肢として、ニューロキニン1受容体拮抗薬であるマロピタント(商品名:セレニア®)があります。研究では、マロピタントを48時間ごとに経口投与したところ、14日後に飼い主が感じる咳が軽減したと報告されています。

使ってはいけない薬

気道拡張薬(テオフィリン β刺激剤等)は、下部気道を拡張する可能性はあるものの実際の気管は拡張しないため、犬の気管虚脱には効果はありません。気管支拡張薬には、心拍数や血圧の上昇、過興奮、落ち着きのなさなどの副作用が伴います。これらの薬物の有効性を示す明確な証拠が不足しているため、日常的な使用は推奨されません。

​さらに、最終的には薬物に反応しなくなる(耐性がつく)ことが報告されています。研究者は、β刺激薬とメチルキサンチンが気管支筋を弛緩させ気管の平坦化を悪化させ、閉塞をさらに悪化させると主張しています(Brichetto et al . 2003; Miyamoto et al . 1994)。

外科的治療

薬物療法が効かない、重度の気管虚脱を抱えている犬には、外科的治療が推奨されます。気管外プロテーゼまたは気管内ステントが選択肢となりますが、外科的治療でも完治することはありませんので外科的治療を行った後も内科治療は継続しなければなりません。

胸腔内、主幹、および大葉気管支の虚脱により咳を呈する犬は、手術による改善が期待できません。

■気管外プロテーゼ/リング

気管外プロテーゼやリングは、気管の外側から圧力を加えることで、気道を広げた状態に保ちます。この治療には外科的な切開が必要となり、複数のポリプロピレンリングを気管の周囲に縫い付けて気管を補強します。
【特徴】
胸郭外気管虚脱の治療に最も適しています。
胸郭内の気管虚脱に対しても、成功した治療例があります。
【合併症のリスク】
肺炎、喉頭麻痺、気管壊死、虚脱の再発、縫合糸の剥離、プロテーゼのずれなどが起こる可能性があります。研究では、この治療を受けた犬の42%に重大な合併症が見られまました。


■気管内ステント

気管内ステントは、気管虚脱の犬に対するもう一つの選択肢です。
【特徴】
自己拡張型で、透視下または気管支鏡を使って留置するため、外科的な切開は不要です。

緊急治療としてだけでなく、長期的な治療にも用いられます。
気管支内には留置できません。また、患者さんによっては複数のステントが必要になる場合があります。
【合併症のリスク】
ステントが留置されている付近の虚脱、感染、ステントのずれ、破損、気管穿孔、肉芽腫の形成などが起こる可能性があります。研究では、この治療を受けた犬の43%に術後、重大な合併症が見られます。平均約2年間の追跡調査の結果、以下の合併症が確認されました。

  • ステント破損:25%
  • 組織増殖:29% ​組織増殖は、気管ステント留置術における慢性合併症です。​これにより、咳の再発や気道閉塞(固定)といった臨床症状が現れます。

6 犬の気管虚脱の80%が改善するアナボリックステロイド

犬の気管虚脱 アナボリックステロイド治癒
犬の気管虚脱:アナボリックステロイドの治癒効果

X線所見の変化
Td/Ti比(気管径/胸郭入口径)
短頭種:有意に改善(0.12 → 0.15, p=0.006)
普通頭種:有意に改善(0.15 → 0.18, p=0.001)
VHS(心陰影スコア)
普通頭種で治療後に軽度改善(p=0.02~0.036

アナボリックステロイドの内服薬は犬の気管虚脱の症状を改善します。研究では50%以上が咳を完全に止め、さらに30%が症状の改善を示しました。(当院でも処方しており。非常に効果的な治療です)

参考:71%がアナボリックステロイド投薬と二次的要因(肥満、空気中の刺激物など)の管理に効果があり。副作用の報告もない
参考:国際免疫薬理学ジャーナル 🔗https://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/039463201102400113?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori:rid:crossref.org&rfr_dat=cr_pub%3dpubmed

参考:スタナゾロール経口投与による犬の気管虚脱への影響

参考:Dondi M、Bianchi E、Quintavalla F、Saleri R. 犬の気管虚脱に対するスタノゾロール経口投与の効果。掲載: WSAVA-FECAVA-AVEPA 会議議事録、10 月 3 ~ 6 日、グラナダ。 2002年; p. 169.

アナボリックステロイドの作用機序

■気管のコラーゲン合成を促進し、気管の異常な構造を改善することで、気管虚脱の臨床症状を改善します。
■タンパク質同化作用により首を支える筋肉の筋肉量も増加します。気管粘膜の炎症を抑える作用もあります。
■亜酸化窒素の産生を減らし、IGF-1の産生を刺激することで気管軟骨細胞のアポトーシスを減らします。
■肝機能および二次形質の変化は認められません
■線維芽細胞培養においてコラーゲン合成に好影響を与えることが試験で示されています。TGFβ-1(トランスフォーミング成長因子ベータ1)は軟骨細胞の増殖と細胞外マトリックスの付着を促します。アナボリックステロイドは、気管軟骨細胞および線維芽細胞によるTGFβ-1の合成増加を誘導すると考えられます。
参考:Falanga V, Greenberg AS, Zhou L, Ochoa SM, Roberts AB, Falabella A, Yamaguchi Y. アナボリックステロイドスタノゾロールによるコラーゲン合成の促進. J Invest Dermatol 1998; 111:1193–7.

TGF-β1とは

TGF-β1はほぼ全ての種類の細胞で産生されるサイトカインで、細胞増殖、成長、分化や運動性を調節します。また、胚形成、組織再構築や創傷治癒などの生理的機能にも関与します。

気管虚脱を患った100頭の犬を対象とした後ろ向き研究参考:犬の気管虚脱:本当に手術が必要なのか?100症例の調査:内科的治療または保存的治療により、71頭中71頭で症状の長期的な改善(12ヶ月以上)が認められました。
🔗https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/j.1748-5827.1994.tb01685.x
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7 犬の気管虚脱は肝臓疾患になる

気管虚脱の犬の大多数に、重篤な肝機能障害が認められます。気管疾患の犬と肝臓疾患の関係性はあまり知られていませんが、研究では気管虚脱の犬の多くが肝臓疾患を併発していることが研究で明らかになっておりますので、気管虚脱の犬は定期的に肝臓の検査を受けてください。

なぜ気管虚脱から肝臓疾患なるのですか?

人では「低酸素性肝疾患」と呼ばれており、慢性的な低酸素状態が肝臓に重篤な障害を起こすと考えられています。
研究では、気管虚脱の犬26頭中12頭(46%)の犬で、2種類以上の肝酵素の血清活性が上昇していました。血清基礎胆汁酸濃度は26頭中24頭で高値でした。

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